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Золотой храм / 金閣寺

Книга для чтения на японском языке
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Артикул: 850709.01.99
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«Золотой Храм» — самое известное произведение японского писателя Юкио Мисимы. Оно основано на реальном факте: в 1950 году монах сжег Золотой Храм в Киото — и этот разрушительный эпизод настолько впечатлил Мисиму, что тот решил написать свою версию события. Философский роман с тонкой восточной созерцательностью, живописными пейзажами и красочными метафорами рассказывает о поиске красоты в этом мире — и невозможности обрести Прекрасный идеал. Молодой монах Мидзогути, с детства восхищающийся образом Золотого Храма, посвятил жизнь поиску того самого идеала. Но порой стремление к гармонии с внешним миром приводит к роковым последствиям…
Мисима, Ю. Золотой храм / 金閣寺 : книга для чтения на японском языке : художественная литература / Ю. Мисима. - Санкт-Петербург : КАРО, 2024. - 352 с. - (近現代文学) - ISBN 978-5-9925-1828-3. - Текст : электронный. - URL: https://znanium.ru/catalog/product/2189069 (дата обращения: 02.04.2025). – Режим доступа: по подписке.
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三島由紀夫
金閣寺


УДК 	811.521
ББК 	81.2 Яп-93
	
М65
Мисима, Юкио.
М65	
Золотой Храм : книга для чтения на японском 
языке / Юкио Мисима. — Санкт-Петербург : КАРО, 
2024. — 352 с. — (近現代文学).
ISBN 978-5-9925-1828-3.
«Золотой Храм» — самое известное произведение 
японского писателя Юкио Мисимы. Оно основано на реальном факте: в 1950 году монах сжег Золотой Храм в Киото — и этот разрушительный эпизод настолько впечатлил 
Мисиму, что тот решил написать свою версию события.
Философский роман с тонкой восточной созерцательностью, живописными пейзажами и красочными метафорами рассказывает о поиске красоты в этом мире — и невозможности обрести Прекрасный идеал. Молодой монах 
Мидзогути, с детства восхищающийся образом Золотого 
Храма, посвятил жизнь поиску того самого идеала. Но порой стремление к гармонии с внешним миром приводит к 
роковым последствиям…
УДК 811.521 
ББК 81.2 Яп-93
ISBN 978-5-9925-1828-3
© КАРО, 2024
Все права защищены


 
 
第一章
幼時から父は、私によく、金閣のことを語
った。
私の生れたのは、舞鶴から東北の、日本海へ突
き出たうらさびしい岬である。父の故郷はそこで
はなく、舞鶴東郊の志楽である。懇望されて、僧
籍に入り、辺鄙な岬の寺の住職になり、その地で
妻をもらって、私という子を設けた。
成生岬の寺の近くには、適当な中学校がなか
った。やがて私は父母の膝下を離れ、父の故郷の
叔父の家に預けられ、そこから東舞鶴中学校へ徒
歩で通った。
父の故郷は、光りのおびただしい土地であっ
た。しかし一年のうち、十一月十二月のころに
は、たとえ雲一つないように見える快晴の日に
も、一日に四五へんも時雨が渡った。私の変りや
すい心情は、この土地で養われたものではないか
と思われる。
3


五月の夕方など、学校からかえって、叔父の
家の二階の勉強部屋から、むこうの小山を見る。
若葉の山腹が西日を受けて、野の只中に、金屏風
を建てたように見える。それを見ると私は、金閣
を想像した。
写真や教科書で、現実の金閣をたびたび見なが
ら、私の心の中では、父の語った金閣の幻のほう
が勝を制した。父は決して現実の金閣が、金色に
かがやいているなどと語らなかった筈だが、父に
よれば、金閣ほど美しいものは地上になく、又金
閣というその字面、その音韻から、私の心が描き
だした金閣は、途方もないものであった。
遠い田の面が日にきらめいているのを見たり
すれば、それを見えざる金閣の投影だと思った。
福井県とこちら京都府の国堺をなす吉坂峠は、丁
度真東に当っている。その峠のあたりから日が昇
る。現実の京都とは反対の方角であるのに、私は
山あいの朝陽の中から、金閣が朝空へ聳えている
のを見た。
こういう風に、金閣はいたるところに現われ、
しかもそれが現実に見えない点では、この土地に
おける海とよく似ていた。舞鶴湾は志楽村の西方
一里半に位置していたが、海は山に遮ぎられて見
えなかった。しかしこの土地には、いつも海の予
4


感のようなものが漂っていた。風にも時折海の匂
いが嗅がれ、海が時化ると、沢山の鴎がのがれて
きて、そこらの田に下りた。
体も弱く、駈足をしても鉄棒をやっても人に
負ける上に、生来の吃りが、ますます私を引込思
案にした。そしてみんなが、私をお寺の子だと知
っていた。悪童たちは、吃りの坊主が吃りながら
お経を読む真似をしてからかった。講談の中に、
吃りの岡っ引の出てくるのがあって、そういうと
ころをわざと声を出して、私に読んできかせたり
した。
吃りは、いうまでもなく、私と外界とのあい
だに一つの障碍を置いた。最初の音がうまく出な
い。その最初の音が、私の内界と外界との間の扉
の鍵のようなものであるのに、鍵がうまくあいた
ためしがない。一般の人は、自由に言葉をあやつ
ることによって、内界と外界との間の戸をあけっ
ぱなしにして、風とおしをよくしておくことがで
きるのに、私にはそれがどうしてもできない。鍵
が錆びついてしまっているのである。
吃りが、最初の音を発するために焦りにあせ
っているあいだ、彼は内界の濃密な黐から身を
引き離そうとじたばたしている小鳥にも似てい
る。やっと身を引き離したときには、もう遅い。
5


なるほど外界の現実は、私がじたばたしているあ
いだ、手を休めて待っていてくれるように思われ
る場合もある。しかし待っていてくれる現実はも
う新鮮な現実ではない。私が手間をかけてやっと
外界に達してみても、いつもそこには、瞬間に変
色し、ずれてしまった、……そうしてそれだけが
私にふさわしく思われる、鮮度の落ちた現実、半
ば腐臭を放つ現実が、横たわっているばかりであ
った。
こういう少年は、たやすく想像されるように、
二種類の相反した権力意志を抱くようになる。私
は歴史における暴君の記述が好きであった。吃り
で、無口な暴君で私があれば、家来どもは私の顔
色をうかがって、ひねもすおびえて暮らすことに
なるであろう。私は明確な、辷りのよい言葉で、
私の残虐を正当化する必要なんかないのだ。私の
無言だけが、あらゆる残虐を正当化するのだ。こ
うして日頃私をさげすむ教師や学友を、片っぱし
から処刑する空想をたのしむ一方、私はまた内面
世界の王者、静かな諦観にみちた大芸術家になる
空想をもたのしんだ。外見こそ貧しかったが、私
の内界は誰よりも、こうして富んだ。何か拭いが
たい負け目を持った少年が、自分はひそかに選ば
れた者だ、と考えるのは、当然ではあるまいか。
6


この世のどこかに、まだ私自身の知らない使命が
私を待っているような気がしていた。
……こんな一挿話が思い出される。
東舞鶴中学校は、ひろいグラウンドを控え、
のびやかな山々にかこまれた、新式の明るい校舎
であった。
五月のある日、中学の先輩の、舞鶴海軍機関
学校の一生徒が、休暇をもらって、母校へあそび
に来た。
彼はよく日に灼け、目深にかぶった制帽の庇
から秀でた鼻梁をのぞかせ、頭から爪先まで、若
い英雄そのものであった。後輩たちを前にして、
つらい規律ずくめの生活を語った。しかもそのみ
じめな筈の生活を、豪奢な、贅沢ずくめの生活を
語るような口調で語ったのである。一挙手一投足
が誇りにみちあふれ、そんな若さで、自分の謙譲
さの重みをちゃんと知っていた。彼はその制服の
蛇腹の胸を、海風を切って進む船首像の胸のよう
に張っていた。
彼はグラウンドへ下りる二三段の大谷石の石段
に腰を下ろしていた。そのまわりには、話に聴き
惚れている四五人の後輩がおり、五月の花々、チ
ューリップ、スイートピイ、アネモネ、雛罌粟、
などが斜面の花圃に咲きそろっていた。そして頭
7


上には、朴の木が、白いゆたかな大輪の花をつけ
ていた。
話者と聴手たちは、何かの記念像のように動かな
かった。私はといえば、二米ほどの距離を置いて、
グラウンドのベンチに一人で腰掛けていた。これが
私の礼儀なのだ。五月の花々や、誇りにみちた制服
や、明るい笑い声などに対する私の礼儀なのだ。
さて、若い英雄は、その崇拝者たちよりも、よ
けい私のほうを気にしていた。私だけが威風になび
かぬように見え、そう思うことが彼の誇りを傷つ
けた。彼は私の名をみんなにきいた。それから、
「おい、溝口」
と、初対面の私に呼びかけた。私はだまったま
ま、まじまじと彼を見つめた。私に向けられた彼
の笑いには、権力者の媚びに似たものがあった。
「何とか返事せんのか。唖か、貴様は」
「ど、ど、ど、吃りなんです」
と崇拝者の一人が私の代りに答え、みんなが
身を撚って笑った。嘲笑というものは何と眩しい
ものだろう。私には、同級の少年たちの、少年期
特有の残酷な笑いが、光りのはじける葉叢のよう
に、燦然として見えるのである。
「何だ、吃りか。貴様も海機へ入らんか。吃
りなんか、一日で叩き直してやるぞ」
8


私はどうしてだか、咄嗟に明瞭な返事をした。
言葉はすらすらと流れ、意志とかかわりなく、あ
っという間に出た。
「入りません。僕は坊主になるんです」
皆はしんとした。若い英雄はうつむいて、そ
こらの草の茎を摘んで、口にくわえた。
「ふうん、そんならあと何年かで、俺も貴様
の厄介になるわけだな」
その年はすでに太平洋戦争がはじまっていた。
……このとき私に、たしかに一つの自覚が生じ
たのである。暗い世界に大手をひろげて待ってい
ること。やがては、五月の花も、制服も、意地悪
な級友たちも、私のひろげている手の中へ入って
くること。自分が世界を、底辺で引きしぼって、
つかまえているという自覚を持つこと。……しか
しこういう自覚は、少年の誇りとなるには重すぎ
た。
誇りはもっと軽く、明るく、よく目に見え、燦
然としていなければならなかった。目に見えるも
のがほしい。誰の目にも見えて、それが私の誇り
となるようなものがほしい。例えば、彼の腰に吊
っている短剣は正にそういうものだ。
中学生みんなが憧れている短剣は、実に美しい
装飾だった。海兵の生徒はその短剣でこっそり鉛
9


筆を削るなんぞと言われていたが、そういう荘厳
な象徴をわざと日常些末の用途に使うとは、何と
伊達なことだろう。
たまたま、機関学校の制服は、脱ぎすてられ
て、白いペンキ塗りの柵にかけられていた。ズ
ボンも、白い下着のシャツも。……それらは花
々の真近で、汗ばんだ若者の肌の匂いを放ってい
た。蜜蜂がまちがえて、この白くかがやいている
シャツの花に羽根を休めた。金モールに飾られた
制帽は、柵のひとつに、彼の頭にあったと同じよ
うに、正しく、目深に、かかっていた。彼は後輩
たちに挑まれて、裏の土俵へ、角力をしに行った
のである。
脱ぎすてられたそれらのものは、誉れの墓地
のような印象を与えた。五月のおびただしい花々
が、この感じを強めた。わけても、庇を漆黒に反
射させている制帽や、そのかたわらに掛けられた
帯革と短剣は、彼の肉体から切り離されて、却っ
て抒情的な美しさを放ち、それ自体が思い出と同
じほど完全で……、つまり若い英雄の遺品という
風に見えたのである。
私はあたりに人気のないのをたしかめた。角力
場のほうで喚声が起った。私はポケットから、錆
びついた鉛筆削りのナイフをとり出し、忍び寄っ
10


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